見積もりの方法
指針は、見積もりの方法を1つに決めていません。指針の本文は、組み合わせの表を使う方法や、点数にして足したり掛けたりする方法などを挙げています。ここでは、厚生労働省のサイトに掲載されている「リスクアセスメント評価基準(例)-安全編-」の、3つの点数を足す方法(加算法)を紹介します。
見積もりは、危険を洗い出したあとの手順です(リスクアセスメントの手順)。見積もったら、リスクの大きいものから対策を決めます(対策の優先順位)。
3つの点数
| 区分 | 点数 | 目安 |
|---|---|---|
| 致命傷 | 10 | 死亡、失明、手足の切断などの重篤な災害 |
| 重傷 | 6 | 骨折など長期の療養が必要な休業災害、障害が残るけが |
| 軽傷 | 3 | 上記以外の休業災害(医師による措置が必要なけが) |
| 軽微 | 1 | 表面的な傷害、軽い切り傷や打撲(赤チン災害) |
| 区分 | 点数 | 目安 |
|---|---|---|
| 確実である | 6 | かなり注意力を高めていても災害になる |
| 可能性が高い | 4 | 通常の注意力では災害につながる |
| 可能性がある | 2 | うっかりしていると災害になる |
| ほとんどない | 1 | 通常の状態では災害にならない |
| 区分 | 点数 | 目安 |
|---|---|---|
| 頻繁 | 4 | 毎日、頻繁に立ち入ったり近づいたりする |
| 時々 | 2 | 故障、修理・調整などで時々立ち入る(週1回〜月1回) |
| ほとんどない | 1 | 立ち入りや接近はめったにない(年1回程度) |
リスクレベル
| レベル | 合計 | 意味 |
|---|---|---|
| Ⅳ | 12〜20 | 直ちに解決すべき問題がある |
| Ⅲ | 9〜11 | 重大な問題がある |
| Ⅱ | 6〜8 | 多少問題がある |
| Ⅰ | 3〜5 | 必要に応じて低減措置を実施すべきリスク(残っているリスクに応じて、教育や人の配置を考える) |
点数は、対策の優先順位を決めるための目安です。点数が低くても、安全が保証されるわけではありません。
評価基準(例)には、重傷 6 + 可能性がある 2 + 時々 2 = 10 点(Ⅲ)という計算例が載っています。
業種によっては、同じ点数でも目安の書き方が違う表が使われています(たとえば職場のあんぜんサイトの「自動車整備業におけるリスクアセスメントのすすめ方」では、頻度を「1日に1回程度」「週に1回程度」「半年に1回程度」と表しています)。社内で決めた表があれば、それに合わせてください。
見積もりの例(改善前と改善後)
見積もりの例(改善前)
倉庫の通路の曲がり角で、台車を押す作業者と歩行者が出合い頭にぶつかるおそれがある。
- 重篤度:台車に足をひかれて骨折するおそれがある → 重傷 6
- 可能性:角の先が見えず、ふつうに注意していてもぶつかりうる → 可能性が高い 4
- 頻度:毎日何度も通る → 頻繁 4
合計 14 点で Ⅳ。そこで、歩行者通路を柵で台車の通路と分け、曲がり角にミラーを付けました。
改善前
改善後
改善後の見積もり
- 重篤度:台車にひかれたときのけがの重さは変わらない → 重傷 6
- 可能性:柵で台車と人が分かれ、角の先もミラーで見える → ほとんどない 1
- 頻度:毎日何度も通ることは変わらない → 頻繁 4
合計 11 点で Ⅲ。下がったのは「可能性」だけで、けがの重さと通る回数は変わらないため、Ⅳ から Ⅲ への下がり方です。まだ「重大な問題がある」段階なので、台車の速さを決める、柵の切れ目(人が横切る場所)を減らすなど、対策の優先順位に沿って対策を続けます。
点数を選んで、試してみる
上の表と同じ点数です。3つを選ぶと、合計でリスクレベル(Ⅰ〜Ⅳ)が出ます。はじめは上の見積もりの例(改善前)の点数(重傷 6・可能性が高い 4・頻繁 4)が入っています。改善後の点数(重傷 6・ほとんどない 1・頻繁 4)も試してみてください。
表示は目安です。最終的な判断は、事業場で行ってください。
見積もるときの注意
- 対策後に重篤度を下げすぎる。注意喚起や教育では、起きたときのけがの重さは変わらないことが多いものです。重篤度が下がるのは、危険そのものが小さくなったときです。
- ひとりで決めない。指針は、作業をよく知っている職長などに、危険の洗い出しや見積もりをしてもらうよう示しています(だれが行うか)。
- 見積もって終わりにしない。対策をとったら見積もり直して、リスクが下がったことを確かめます(対策の優先順位)。
安全ヨシでは
- 標準評価は、このページの評価基準(例)と同じ表です。重篤度(アプリでは「重大性」と表示します。10・6・3・1)、可能性(6・4・2・1)、頻度(4・2・1)を選ぶと、合計でⅠ〜Ⅳを表示します。会社で ○△× 方式を使っている場合は、最初の設定で選べます(あとから変えることはできません。○△× 方式はⅠ〜Ⅲの3段階です)。
- 重大性の選び方を助けます。想定される傷病を選ぶと、推奨の点数を示します。推奨と違う点数にしたときは、理由をメモに残すよう案内します。
- 対策の前と後を見くらべられます。委員会の資料の PowerPoint では、リスク評価を1件ごとに「対象・現状の評価・対策案・対策後」のスライドにします。
App Store で近日公開
出典
- 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(2006年3月10日、別添1)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/03/h0310-1a.html - 同 別添2(リスクの見積もりと優先度の設定の例)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/03/h0310-1b.html - 厚生労働省 掲載資料「リスクアセスメント評価基準(例)-安全編-」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001414141.pdf - 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「自動車整備業におけるリスクアセスメントのすすめ方」リスクの見積り(業種別の表の例)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/risk/seibi08_05.html
見積もりの例は、説明のために作ったものです。点数の表は一例なので、社内で決めた表があれば、それに合わせてください。個別の事業場で法令上どのような対応が必要かは、所轄の労働基準監督署や専門家にご確認ください。
