先送りしてはいけない対策があります。予算化は、費用のかかる恒久的な対策を確実に実行するための手段です。法令で決められている措置や、重大な危険に対する措置を、予算がつくまで先送りしてはいけません。安全に作業を続けられないときは、ただちに作業を止めるなどの措置をとり、事業者・責任者に報告します。暫定措置で安全に管理できる場合も、その効果・担当者・期限を決めて確かめながら、恒久対策につなげます。
なぜ「やりっぱなし」になるのか
リスクアセスメントで「柵を付ける」「手すり付きの作業台にする」と決めても、費用がかかる対策はその場ではできません。よくあるのは次のような流れです。
- 対策を決めたが、費用の見積もりをしていない
- 会社が来年度の予算を決める時期を知らず、申請しそびれる
- 予算がついたのに、だれがいつ実施するかが決まっていない
- 実施したが、リスクが下がったかを確かめていない
どれも、一つひとつの手順は難しくありません。予算を決める時期から逆算して、決まった時期に決まったことをするだけで、多くの対策は翌年度に実現できます。
1年の流れ
予算を決める時期は会社によって違います。決算の数か月前に来年度の予算を組む会社が多いので、まずは自社の時期を経理や総務に確かめます。次は、その時期を中心にした1年の流れの例です。

- ふだん:見つけて、対策と概算を決める巡視やリスクアセスメントで、すぐできない対策が出たら、おおよその費用(概算)を記録しておきます。それまでの間は、立入禁止や手順の見直しなど、安全に作業を続けられる暫定措置をとり、効果・担当・期限を決めて確かめます。安全に続けられないときは、作業を止めます。
- 予算を決める時期の前:洗い出して、順番を決める概算のついた対策を一覧にし、委員会でリスクの大きさと期限から優先順位を決めます。
- 予算を決める時期:申請する優先順位の高いものから、会社の予算に申請します。申請した金額(予算申請額)も記録します。
- 翌年度の初め:年間計画に入れる予算がついた対策を、年間の安全衛生計画に入れ、担当と実施月を決めます。年間計画は委員会で調査審議することとされているので、計画を委員会で確かめ、毎月の進み具合も委員会で見ていきます。
- 翌年度:実施して、確かめる実施したら、実際にかかった費用(実績)を記録し、リスクを見積もり直して下がったことを確かめ、委員会で報告します。
進め方
費用は3つに分けて記録する
| 区分 | いつ記録するか | 使いみち |
|---|---|---|
| 概算費用 | 対策を決めたとき | 予算に乗せる候補を選ぶ |
| 予算申請額 | 予算を申請したとき | 申請した対策と金額の確認 |
| 実績費用 | 実施したとき | 翌年の概算の参考、効果とくらべる |
3つを混ぜずに分けておくと、「申請したのに実施していない」「概算より大きくかかった」が一目で分かります。
優先順位の決め方
- リスクの大きいものから。リスクアセスメントでⅣ・Ⅲになったものを先にします(リスクアセスメントのやり方)。
- 暫定措置で管理しているものは早めに。立入禁止や作業の一時中止で管理している対策は、仕事への影響も大きいので、優先して予算に乗せます。翌年度まで待てないものは、今年度の臨時の支出も検討します。
- 上の順位の対策を、費用だけで外さない。指針では、費用がリスクを下げる効果と大幅に釣り合わない場合を除き、危険をなくす・設備で守る対策を優先することとされています。
申請の書き方
予算の申請には、次をそろえると通りやすくなります。リスクアセスメントの記録が、そのまま根拠になります。
- どこの、どんな危険か(写真があると伝わります)
- リスクの大きさ(対策前)と、対策後に見込む大きさ
- 対策の内容と、概算費用(見積書があれば添える)
- それまでの暫定措置と、その不便さ
予算がつかなかったら
- 暫定措置で安全に管理できているかを確かめ、続けていることを記録に残します。管理しきれない場合は、作業を止めるなどの措置をとり、事業者・責任者に判断を求めます。
- 費用の小さい代わりの対策がないか、委員会で話し合います。
- 見送った理由を議事録に残し、翌年度にもう一度申請します。
委員会とのつながり
衛生委員会では「安全衛生に関する計画(衛生に係る部分)の作成、実施、評価及び改善」を調査審議することとされています(労働安全衛生規則第22条第1項第3号。安全委員会では安全に係る部分、第21条)。費用のかかる対策を計画に入れて実行するには、予算の裏付けが欠かせません。
予算を決める時期の前の月の委員会で、概算のついた対策の一覧を議題にすると、話し合いが具体的になります(毎月の議題の例)。
安全ヨシでは
- 費用を3つに分けて残せます。対策ごとに、概算費用・予算申請額・実績費用を別々に記録します。
- 予算の時期にお知らせします。設定の「通知」で「予算編成月」を選ぶと、毎年その月の初めに、概算費用を入れた対策の予算申請額を確認するよう通知が出ます。
- 年間計画書を作れます。年度の初めに取り組み項目と実施月を決めておくと、厚生労働省の様式3-2 に準じた年間計画書(Excel)に、計画・実績・判定が月ごとに入ります。実績はアプリの記録から自動で数え、未完了の対策と期限を過ぎた対策の件数も載ります。委員会で報告するときの出力画面から作れます。
- 1年分をまとめて見られます。リスク・対策のタブのレポートから作る「年度まとめ帳票」(Excel)で、概算・予算申請・実績をそれぞれ合計します。
App Store で近日公開
出典
- e-Gov 法令検索「労働安全衛生規則」(第21条・第22条:安全委員会・衛生委員会の付議事項)
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 - 厚生労働省 別添1「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(リスク低減措置の優先順位と費用の考え方)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/03/h0310-1a.html
1年の流れと申請の書き方は、一般的な進め方の一例です。予算の時期や手続きは会社ごとに違います。
